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歯並びと健康寿命の関係性

はじめに 健康寿命って何?

平成25年の日本人の平均寿命は女性が86.61歳、男性が80.21歳と、世界でもトップクラスの水準であることは周知の事実であります。昨今、厚生労働省は国民の健康の増進の総合的な推進を図る基本的な方針(健康日本21(第2次))の中で、健康寿命の延伸を大きな目的の一つに位置付けました。この報告書の中での健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義づけられています。だれもが、健康に長寿を全うしたいと願うものであり、要介護状態になってしまうことを回避したいと思うのは当然だと思われます。では、現状で日本人における、平均寿命と健康寿命の間にはどれほどのかい離があるのでしょうか?その答えが同報告書で示されています。これを図1に示しました。

平成22年の報告では、平均寿命と健康寿命との間には、男性では約9年、女性では約13年もかい離があると報告されています。これはあくまで平均値ということですが、多くの高齢者は寿命が尽きるまでに、何らかの健康上の問題で日常生活が制限された期間を過ごしているということがわかります。

歯の健康と健康寿命の関係

愛知県知多半島の65歳以上の住民を3~4年間追跡した研究において、歯が多く残っている人や、歯が少なくても義歯等を入れている人では、歯が少ない人また義歯を入れていない人と比較して、年齢、治療中の病気や生活習慣などの影響を取り除いても、その後に認知症発症や転倒する危険性が低いということがわかってきています。4は、歯の状態や入れ歯の使用状態と認知症になっている人の割合を示しています。これによると歯を失い、入れ歯を使用していない場合、歯が20歯以上残っている人や歯がほとんどなくても入れ歯によりかみ合わせが回復している人と比較して、認知症の発症リスクが最大1.9倍になるということを示しています。また、5では、歯が19歯以下で入れ歯を使用していない人は、20歯以上保有している人と比較し、転倒するリスクが2.5倍になることが示されています。

また6によると、保有する歯が19歯以下の人は、20歯以上の人と比較して1.2倍要介護認定を受けやすいという結果が出ています。つまり要介護状態になる危険性も歯が多い人ほど少ないこともわかってきています。

兵庫県香美町の報告では、80歳全員の調査(平成23年)をしており、8020を達成している80歳の方が平成4年からの20年間で約3倍になっていたそうです。このような80歳の方々において、自家用車に乗っている割合や携帯電話を保有している割合は8020達成者の方が高いという結果も出されています。つまり元気な高齢者でいるには、できるだけ自分の歯を保有することが秘訣となりそうです。しかし万が一、歯を失ってもしっかり入れ歯を使えば、あらゆる機能は維持されるので、かかりつけ歯科診療所で相談しながら定期的なチェックが重要ということになります。

以上のように、歯の多い人ほどまたはすでに自分の歯を喪失しても入れ歯等で、口腔機能を回復できている高齢者は認知症になりにくく、転倒も少ないという疫学結果がわかってきています。歯が多く残っていることや、すでに喪失していても入れ歯等で口腔機能を維持することは要介護になりやすい疾患を予防し、健康寿命を延伸する可能性があると思われます。

日本人の歯の本数

8020運動は、平成元年より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われています。そのため、「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との願いを込めてこの運動が始まりました。(日歯HPより引用)この運動の成果は、厚労省が6年に一度実施している歯科疾患実態調査で確認できます(7)。この報告によりますと、すべての年齢層において年々保有する平均歯数は増加してきています。現在、平均値で20本以上保有する年齢層は69歳までとなっています。70歳以降では自分の歯が20本を下回っている方が多いことがわかります。先に述べた平均寿命は、女性では86.41歳、男性が79.94歳である日本において、歯の本数は長寿に追いついていない現状となっています。一度歯を失うと補綴物と言って人工物で補い、機能が落ちないようにかかりつけ歯科診療所で定期的にチェックを受けることが必要となります。また、自分の歯をできるだけ多く残すためにかかりつけ歯科診療所で定期的な管理を受けることは非常に重要と言えます。

歯列矯正は「全身の健康」につながる

歯並びが悪いと食べ物をよく噛めなかったり、歯ブラシが届かずきちんと磨きにくかったりするため、虫歯や歯周病になりやすいということがあります。また、どこが虫歯になっているのかもわかりにくく、気がついたら虫歯になっていることも多いのです。そういった意味でも矯正治療は「究極の予防」であると言えます。

保険制度の違いなどから日本はどうしても欧米諸国に比べると遅れがちなのですが、医療費がほぼ自己負担のアメリカでは歯列矯正をすることがひとつのステイタスになっています。子どもの歯並びが悪かったらそれは親の責任であるという考えが主流ということが分かります。

というのも、凸凹のままの歯並びを放っておいて虫歯や歯周病になってしまったら、一生にかかる医療費が高額になるからです。歯科の研究に関してもアメリカは先進国で、歯の疾患と全身の健康には関わりがあるということが広く浸透していることも大きい。定期的にメンテナンスに通う人も多く、歯科の受診率が高いです。

一方、日本では、歯に対する意識がまだまだ低く、情報も少ないため、歯並びに凸凹があって虫歯になっても、虫歯だけを治して終わりというケースが多い。それでも、10年20年前に比べれば矯正をする人は圧倒的に増えているし、少しずつその重要性が認知されはじめているのかなと感じています。受診のきっかけになるのはやはり、人から歯並びの悪さを指摘されたことや、自分でも見た目が気になるようになったということが多いです。

今は平均寿命が延びており、人生100年とも言われる時代ですので、初診時に10歳だったとしても、そこから90年近く自分の歯を使うことになる。そうすると、見た目だけではなく、全身の健康を守るためにも、「一生自分で噛める歯並び」を作っていくことが大切になってくるのです。

笑顔で長生きをするために

人間は悪い状態にも順応することができるから、生まれつき歯が凸凹でも生活に支障がなければ歯医者には行かないという人は多いのが現状です。

でも、人生100年とすると、矯正治療は長くても2年。人生のうちのたった2%の期間でそれをやらなかったために、60歳を過ぎてからの人生を自分の歯で食べられなくなってしまったり、心臓病や脳梗塞などの病気になってしまったりしたらと考えると、リスクの方が大きいと思います。

そのときになって「矯正しておけばよかったな」と思っても、歯周病で歯が無くなっていれば矯正はできません。30代40代で矯正をしたとしても、まだその先は50年以上もあります。病気で長生きをするのと健康で長生きをするのとでは雲泥の差がある。早めに治療をした方がよいというのはここに繋がってきます。

また、矯正治療で見た目のコンプレックスが解消されるにつれ、患者さんが内面からどんどん明るくなってくるのを感じます。初診と治療終了時では全然顔が違う、患者さんの笑顔を見るのがうれしいですし、楽しいです。

歯科医師として、その人の人生に少しでも役に立てているのかなと思える、やりがいを感じる瞬間です。

矯正をするしないにかかわらず、歯医者に当分行っていないという人は一度行ってみた方がいいと思いますね。30代を超えると8割の人が歯周病だといわれていますので、ほとんどの人が何かしらの歯の疾患を抱えていると考えられます。痛くなってからだと遅くて、神経を取ったり、歯を抜いたりしなくてはならなくなる可能性もある。定期的に検診に行くことが大事です。皆さんが健康に生きるための手助けをするために私たち歯科医がいますので、これを機にぜひ歯医者に行ってみてください。